TRAPICHE EMERALD
トラピッチェ
エメラルド
六方向へ伸びる模様は、誰かが描いたものではありません。 エメラルドが自然の中で成長した過程が、そのまま模様として残ったものです。 一石ごとに違う表情を持つトラピッチェエメラルドを、実物写真とともに見ていきます。
ABOUT TRAPICHE
「トラピッチェ」という名前は、歯車のような模様から
「trapiche」はスペイン語で、サトウキビなどを圧搾するために使われた多腕の車輪・装置を表す言葉です。 中心から六方向へ伸びる模様がその形に似ていることから、トラピッチェエメラルドと呼ばれるようになりました。 GIAによると、トラピッチェエメラルドは19世紀にはすでに鉱物学的に記載されています。
THE SIX-RAY PATTERN
亀の甲羅のような模様は、どう生まれる?
エメラルドは六方晶系の結晶です。 トラピッチェでは、結晶の成長と周囲の母岩・流体との相互作用の中で、中心部から六方向へ暗色の物質を伴う成長構造が形成されます。 スライスしたりカボションに研磨したりすると、その構造が車輪や星のような模様として現れます。
単純に「亀裂が六本入った石」ではありません。 結晶成長そのものと密接に関係する特殊な構造で、形成機構については研究が積み重ねられてきました。
NOT ALL ARE PERFECTLY SYMMETRICAL
整いすぎていないことも、個性です
六本のラインが完全に均等で、輪郭まで左右対称になる石ばかりではありません。 成長の途中で形が変わったもの、模様の一部が強く出たもの、独特の輪郭を持つものなど、一石ごとの差が大きい宝石です。
そのためトラピッチェは、規格化された形を探すよりも、色、模様、輪郭の組み合わせに惹かれる一石を選ぶ楽しさがあります。
同じ模様を、もう一度探すことはできない。
そこがトラピッチェの面白さです。
INDIVIDUALITY
模様も、形も、一石ごとに違う
写真を並べると、トラピッチェが「一つの型」ではないことがよく分かります。


COLOMBIA & OTHER REPORTS
最もよく知られる産地はコロンビア
典型的なトラピッチェエメラルドはコロンビアで特に有名で、GIAの研究ではムゾー、コスケス、ペーニャス・ブランカスなど西側の鉱床が詳しく報告されています。 一方で、コロンビア以外からもトラピッチェ状のエメラルドは報告されており、GIAにはパキスタン・スワート産の研究例があります。 したがって「コロンビアでしか産出しない」と断定するのは現在では適切ではありません。
DESIGN JEWELRY
どんなジュエリーにする?
一般的なエメラルドカットとは違い、トラピッチェは輪郭や厚みが一定ではありません。 既製の枠へ無理に合わせるのではなく、石を見てから設計するオーダーメイドと相性のよい宝石です。
模様を隠さずに見せるのか、中心を強調するのか、左右非対称の形をデザインへ取り込むのか。 石の個性を欠点として整えるのではなく、デザインの出発点として使います。
J.C.BAR ORDER JEWELRY
実際の仕立てで見るトラピッチェ
模様を正面から見せる
六方向のラインが最も美しく見える角度を正面に据え、リング全体は控えめにまとめています。
輪郭もデザインにする
不規則な形を均一に見せようとせず、石の輪郭そのものを作品の個性として生かします。
EMERALD CONTENTS
ほかのエメラルド専門ページ
FAQ
トラピッチェエメラルドのよくあるご質問
六本の線は傷や亀裂ですか?
単なる六本の亀裂ではありません。結晶成長に伴って形成された特殊な構造が、研磨面で六方向の模様として見えています。
コロンビアでしか採れないのですか?
コロンビアが最も有名な産地ですが、コロンビア以外からもトラピッチェ状のエメラルドは報告されています。GIAにはパキスタン・スワート産の研究例があります。
どんな模様を選べばよいですか?
完全な対称性だけが正解ではありません。グリーンの美しさ、模様の見え方、輪郭、ジュエリーにしたときの雰囲気まで含めて、惹かれる一石を選ぶのがおすすめです。
オーダーメイドできますか?
可能です。形が不規則なものが多いため、既製枠より一石ごとに設計するオーダーメイドと相性のよい宝石です。石の厚みやフィッシャーも確認して、安全性を考えながらデザインします。
嶋 直樹 / Naoki Shima
一般社団法人日本ジュエリー協会認定 1級ジュエリーコーディネーター(JJA-JC)/日本真珠振興会認定 パールスペシャリスト。 世界各地の宝石産地や市場へ足を運び、宝石の調査・買付を行う。掲載している宝石写真の多くを自ら撮影。
CARE & HANDLING
トラピッチェエメラルドのお手入れ・取り扱い
トラピッチェもエメラルドですので、モース硬度は7.5〜8ですが、フィッシャーや複雑な内部構造を持つ個体が多く、強い衝撃には注意が必要です。 超音波洗浄や高温のスチーム洗浄は避けてください。 使用後は柔らかな布でやさしく拭き、他のジュエリーとぶつからないよう個別に保管することをおすすめします。